被爆者の声 証言218 8月9日 赤ちゃんを忘れた

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証言218 8月9日

赤ちゃんを忘れた

当時23歳


女の人がよろよろ倒れながら来ました。どぶ川にですね。
どぶ川に来て、その方が、ちょうど、口のここから耳のここまで、
こう、石榴〈ざくろ〉のように割れてるんですよね。
そして、もう、なんかグドグド、グドグド血が出ていますからですねぇ。
だけど私達も、何にも持たないしですね、
それを介抱〈かいほう〉するっていうこともできないし。

そしたら『赤ちゃんを忘れた』っておっしゃる訳〈わけ〉ですね、その方が。
『今から、見つけに行く』っておっしゃった訳〈わけ〉です。
それで、『もう、燃えてるから、行ってもダメ』って言うてでも、
やっぱり、行くて言うてきかれない訳〈わけ〉ですよね。
それでもどぶ川に浸かってるし、
足はぬかってるしですね、身体はそんな風だし。

もうずいぶんお止めしましたけれども、よろよろよろよろしながらですね、
行かれましたけどね。
結局、もうその時もう、本当もう、誰が可愛〈かわい〉いっていっても、もう、
自分っていうことだけだなぁって思ってですね。

人間の孤独っていうのか、もうイヤという程ですね、そこでもう。
あのう、考えさせられました。
結局、自分っていうことが一番で、
二番目に子供っていう風になるんだなあていうこと…


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